生まれつきあるシミやアザは、多くの人にとって気になる存在です。これらのシミやアザにはさまざまな種類があり、それぞれに異なる原因や治療法があります。
- 生まれつきあるのシミとアザについて
- アザの種類
- アザの治療と保険適用
本記事では、生まれつきのシミとアザの違いや原因、具体的な種類について詳しく解説します。生まれつきのシミについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
生まれつきあるシミとアザの違い
生まれつきのシミとアザは、発生する原因や見た目、そしてその影響には明確な違いがあります。シミは皮膚内にメラニンが蓄積して生じますが、生まれつきのものではなく、年齢とともに現れるものを指します。メラノサイトという細胞が活性化し、過剰にメラニンが生成して、肌の色が濃く見える部分が生じるのです。シミは主に紫外線やホルモンの影響を受けて後天的に形成されるため、生まれつき存在するものではありません。
一方、アザは色素斑(しきそはん)や母斑(ぼはん)とも呼ばれ、生まれつき存在しているケースが少なくありません。アザは皮膚の一部が変色して目立つ状態であり、その色によって青アザ、茶アザ、赤アザ、黒アザなどに分類されます。アザは生後すぐに見られることもあり、基本的には遺伝や出生時の要因によって形成されます。多くの場合、アザは健康に悪影響を及ぼすことはありませんが、人目につきやすい場所にできた場合には心理的な負担となることがあります。
また、内出血による皮膚の色の変化をアザと呼ぶことがありますが、これは外的な衝撃による一時的なものであり、生まれつきのアザとは異なります。内出血は時間とともに治癒しますが、アザは基本的には自然に消えることはありません。
総じて、シミは後天的に現れる皮膚の変色であり、アザは生まれつき存在する色素斑である点が主な違いです。これらの違いを理解することで、適切な対処法やケア方法を選ぶことが可能になります。
生まれつきあるアザの原因
生まれつきのアザができる原因は、皮膚の構造とメラニン色素、さらには血管の異常に関係しています。皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織という三層構造をしており、表皮にはメラニン色素を生成するメラノサイトが存在します。通常、メラノサイトは表皮に位置しますが、まれに真皮にも存在し、そこでメラニン色素を生成する場合があります。これが皮膚の色を変化させ、アザの原因となります。
真皮で生成されたメラニン色素によって、皮膚は青や茶色に見えます。例えば、真皮の深い部分にメラニンが存在すると青っぽく見え、浅い部分に存在すると茶色っぽく見えます。また、メラニンの量が多ければ色が濃くなり、少なければ薄くなります。これが黒、茶、青アザの原因です。
一方、赤アザの原因はメラニンではなく血管にあります。皮膚の血管が異常に増殖したり、奇形を起こしたりすると、赤血球に含まれるヘモグロビン(赤い色素)によって皮膚が赤く見える現象が起こります。赤アザはこの血管の異常増殖によるもので、医学的には血管腫と呼ばれます。
これらのアザは生まれつき存在することが多く、その形成には遺伝的要因や出生時の環境要因が関係しています。
このように、アザの色や形状は皮膚の構造や色素、血管の状態によって決まります。
青アザ
青アザは、皮膚の下にメラニン色素が沈着することで現れる青みがかった斑点です。これには、蒙古斑(もうこはん)、太田母斑(おおたぼはん)、青色母斑(せいしょくぼはん)の三つの主なタイプがあります。これらの青アザは、見た目に特徴があり、それぞれ異なる原因や治療方法があります。以下では、これらの青アザについて詳しく解説していきます。
蒙古斑
蒙古斑は、生後1週間から1ヵ月頃に見られる色調が一様の平らな青アザで、一般的に腰やお尻に発生します。2歳頃までに色が濃くなりますが、成長に伴い4歳から10歳頃には薄くなっていく傾向にあります。このアザは黄色人種に多く見られ、日本人に関してはほぼ100%の確率で現れます。
腰やお尻以外の場所にできる青アザは異所性蒙古斑と呼ばれ、通常の蒙古斑よりも消えにくい特徴があります。蒙古斑は成長過程で自然に消えることが多いため、基本的には治療は必要ありません。
太田母斑
太田母斑は、頬や目の周り、おでこなどに発生する青紫色や灰青紫色のアザです。色むらがあったり、点状の褐色斑が混ざっていたりする傾向があります。通常、顔の片側にだけ現れ、多くは1歳頃までに出現しますが、思春期や成人後に発生するケースもあります。発生頻度は0.1〜0.2%と低く、男性よりも女性に発生しやすい傾向にあります。
また、肩から肩甲骨の範囲に生じている場合は伊藤母斑と呼ばれ、太田母斑とは区別されています。
太田母斑は、顔の目立つ部分にできるため、審美的観点から治療を希望する人も多いようです。治療法としては、Qスイッチレーザーによる治療が効果的だといわれています。Qスイッチレーザーの詳細は、アザの治療法の項目で詳しく述べます。
青色母斑
青色母斑は、青色母斑細胞が増殖することでできる青色から黒っぽい色調を呈するアザです。発生頻度は約3%で、ほとんどが乳幼児期までに発生しますが、思春期以降に生じるケースもあります。アザの直径は1cm以下で身体中どこにでも発生する可能性があり、平べったいものから隆起したしこり状のものまでさまざまです。
多くの場合、良性ですが、大きなものは悪性化する可能性があり、悪性黒色腫などのほかの疾患との鑑別が重要です。青色母斑は、見た目だけでなく悪性化の鑑別も必要とする場合があるため、医師の診断と適切な治療が推奨されます。
茶アザ
茶アザには、扁平母斑や遅発性扁平母斑などがあります。加齢などによって生じるシミやそばかすとは異なるため、医学的にも区別されています。
扁平母斑
扁平母斑は、生まれつき、または生後間もなく現れる淡い茶褐色のアザです。直径0.5cmの小さなものから10cmの大きなものまで多様なサイズがあります。このようなアザが多発する場合、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)などの病気が関連している可能性があります。日本では、基礎疾患が関連するアザをカフェオレ斑、基礎疾患がないものを扁平母斑と区別して呼んでいます。
遅発性扁平母斑
遅発性扁平母斑は、ベッカー母斑とも呼ばれている大きな茶褐色のアザで、思春期に発生する傾向にあります。主に肩のまわりや胸の前側に現れますが、手足や腹部にできることもあります。境界ぎざぎざしていて、患者さんの約半数にはアザの部分に多毛が伴います。
赤アザ
赤アザには、単純性血管腫やいちご状血管腫などがあります。これらのアザは血管の異常な増殖により生じ、主に赤い色を呈します。見た目の変化が特徴であり、早期の診断と適切な治療が求められます。
単純性血管腫
単純性血管腫は、生まれつき存在する平坦な赤いアザで、皮膚の表面に現れます。これは毛細血管の異常な増殖によるもので、毛細血管奇形とも呼ばれます。
皮膚に広がる細い毛細血管が異常に集まった状態で、大きさや形状はさまざまです。年齢とともに色が変わることがありますが、完全に消えることはほとんどありません。また、身体の成長に伴い、アザの面積が拡大したり盛り上がったりすることもあります。
いちご状血管腫
いちご状血管腫は、いちご状に隆起する赤アザで、生後数週間から数ヵ月の間に現れることが多い傾向がある血管腫です。初期症状は赤い斑点として現れ、やがて半分に切ったいちごのように赤く盛り上がります。成長初期に急速に大きくなり、1歳頃にピークに達しますが、その後は徐々に色が薄くなり、小学校低学年までに赤みや隆起がほとんど消える傾向にあります。大きさや発生場所、成長速度は個々の血管腫によって異なります。
黒アザ
黒アザには、主にほくろとして知られている色素性母斑などがあります。以下では、ほくろと生まれつきに生じた先天性色素母斑の違いを合わせて解説します。
先天性色素母斑
色素母斑は、皮膚の母斑細胞がメラニン色素を多く作ることによって生じる黒いアザですが、その大きさによって異なる呼び方がされます。直径が1.5cm以下の場合はほくろと称され、ほとんどが後天的に発生します。一方、先天的に生じた直径が1.5cmから20cm以上になるものを先天性色素母斑と呼びます。
黒いアザは、直径が1cmを超えて毛が生えている場合、悪性腫瘍になるリスクが高まることがあります。このため、大きな黒アザや毛のあるほくろは、定期的なチェックが重要です。
アザの治療法
アザの治療法には、主にレーザー治療が選択されます。主なレーザーの種類には、VビームレーザーとQスイッチレーザーなどがあります。
これらのレーザー治療はアザの種類によって使い分けられており、皮膚の色素や血管異常を改善し、アザの見た目を大幅に改善します。以下に、それぞれの特徴を解説します。
Vビーム
Vビームは、赤アザの治療に対して選択されるレーザー治療法です。このレーザーは赤い色素に反応し、拡張した毛細血管を治療します。従来の色素レーザーに比べて治療効果が高い一方で、Vビームは瘢痕形成のリスクも高いため、皮膚を冷却する装置が搭載されています。ただし、冷却装置があるからといって瘢痕形成を完全に防げるわけではありません。
治療には痛みが伴うため、小児や乳幼児の場合、治療中に暴れてレーザー光線が目に入る危険があることから、全身麻酔が必要となります。また、Qスイッチ・レーザーよりも瘢痕が形成される可能性が高いため、数回の治療で効果が見られなくなった場合、治療の限界と判断し、それ以上のレーザー治療は中止すべきです。
さらに、血管拡張性肉芽腫に対しては、レーザー療法だけでなく、皮膚凍結療法を選択することで、よりよい結果が得られることがあります。
それぞれの方法には利点と欠点があります。専門の医師と十分に相談をして、適切な治療法を選択しましょう。
Qスイッチレーザー
Qスイッチレーザーは、青アザや茶アザの治療に効果が期待できるレーザー治療法です。Qスイッチレーザー治療は、メラニン色素にだけ作用するため、周囲の皮膚へのダメージが少ないのが特徴です。従来のドライアイス圧抵術などの方法は、治療後に瘢痕が形成されるリスクが高いため、現在はあまり使用されていません。
Qスイッチ・レーザーには、ルビー、ヤグ、アレキサンドライトレーザーの3種類があります。太田母斑に対しては、ルビーレーザーが適しているとされています。
ヤグレーザーやアレキサンドライトレーザーも使用されますが、瘢痕形成の点でやや劣ることがあります。最近では、改良型のアレキサンドライトレーザーもQスイッチ・ルビーレーザーに匹敵する性能を持つようになってきています。
レーザー治療は、数ヵ月おきに行われます。治療後、一時的に色が濃くなる炎症後色素沈着が見られることがありますが、通常3〜4ヵ月で自然に消失します。炎症後色素沈着がある期間中に再度レーザー治療を行うと、色が白く抜ける可能性があるため、治療間隔は3〜4ヵ月以上空けることが重要です。適切なレーザー治療を5〜6回以上行うことで、アザはほとんど目立たなくなります。そのほかの青アザに関しては、皮膚の深部にある真皮内メラノサイトには十分なレーザー光が届かないため、アザの色が薄くなることはあっても、完全に消失することは難しい場合があります。
生まれつきのアザの治療は保険が適用される?
保険治療が適用される生まれつきのアザには、次の種類があります。
- 青アザ:太田母斑、異所性蒙古斑
- 茶アザ:扁平母斑
- 赤アザ:イチゴ状血管腫、単純性血管腫、毛細血管拡張症
ただし、茶アザの治療はルビーレーザーによる場合のみが保険適用となっています。
生まれつきアザがある場合には
生まれつきアザがある場合には、早期発見と適切な管理が重要です。放置せずに検査を受ける重要性と定期的な受診の必要性について解説します。アザの種類や症状を理解し、適切な対応を知ることが大切です。
放置せずに検査を受ける
生まれつきの茶アザが多い場合、レックリングハウゼン病などの病気の疑いがあるため、放置せずに早期に皮膚科や小児科で鑑別診断を受けることが重要です。アザを放置すると、レックリングハウゼン病やマッキューン・オルブライト症候群などの潜在的な病気が進行する可能性があります。自己判断せず、専門の医療機関に相談して適切な診断を受けることを推奨します。
定期的に受診する
生まれつきアザがある場合、定期的に皮膚科や小児科で経過観察を行うことが重要です。早期発見と治療が可能になるため、定期的な受診を心がけましょう。特に大きなアザがある赤ちゃんの場合、親御さんの心配は大きいものです。
生後1~2ヵ月頃に相談する方が多くいますが、慌てて治療を開始するのではなく、体が安定する10ヵ月頃からの初回照射を推奨します。近隣の病院で治療を受けることで、通院の負担を軽減できます。
まとめ
ここまで生まれつきあるシミの正体は?についてお伝えしてきました。生まれつきあるシミの正体の要点をまとめると以下のとおりです。
- シミは生まれつきのものではなく皮膚内にメラニンが蓄積して年齢とともに現れるものを指し、アザは生まれつき存在しているケースが多い傾向にある
- アザには多様な種類があり、主に青アザ、茶アザ、赤アザ、黒アザなどに分類される
- アザの治療法は主にレーザー治療が選択され、VビームレーザーやQスイッチレーザーなどがあり、保険治療が適用されるアザの種類は太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、イチゴ状血管腫、単純性血管腫、毛細血管拡張症
生まれつきあるシミだと思っていたものは、実はアザの可能性があります。シミには多様な種類があり、専門の医師による鑑別や適した治療方法があるため、自己判断せずに医療機関への受診をおすすめします。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。