美白有効成分のトラネキサム酸は、シミ対策として注目を集めている薬です。
抗炎症・止血剤としての効果はもちろん、2002年に厚生労働省から安全性と有効性の認可を受けて以来美容分野で美白成分として使用されています。
ではトラネキサム酸はどのようなメカニズムでシミの予防効果を発揮しているのでしょうか。また、できてしまったシミにも効果はあるのでしょうか。
今回は、トラネキサム酸の効果・副作用・使用時の注意点について解説します。
主な美白成分やトラネキサム酸について
- 厚生労働省認可の主な美白成分にはどのようなものがありますか?
- スキンケア用品や化粧品にはさまざまな成分が表示されています。そのなかでも厚生労働省から美白効果の有効性と安全性の認可を受けている成分のみ、美白有効成分としての表示が可能です。認可を受けている主な美白成分には、以下のようなものがあります。
- トラネキサム酸
- ビタミンC誘導体
- アルブチン
- コウジ酸
- ルシノール
- リノール酸
その他にも多数の有効成分が認可を受けていますが、それぞれ色素沈着のメカニズムを阻害するような成分や肌のターンオーバーを促す成分が含まれています。
- トラネキサム酸とはどのような成分ですか?
- トラネキサム酸は、人工的に合成されたアミノ酸の1種です。必須アミノ酸リシンがベースで合成されており、体内で炎症を起こす酵素であるプラスミンの血液溶解作用を阻害します。
この成分からトラネキサム酸は、美白成分に注目されるまでは抗炎症薬・止血剤・アレルギー抑制剤として医療分野で広く使用されていました。これらの目的で、トラネキサム酸を処方された方のシミや肝斑が薄くなったことが美白効果の発見のきっかけでした。
その後、2002年にトラネキサム酸は、厚生労働省からシミ・肝斑の改善と美白効果が認可されています。以降は本来の抗炎症・止血・アレルギー抑制などの目的だけでなく、美白効果のある飲み薬として美容目的でも処方されています。
トラネキサム酸のシミへの効果や副作用
- トラネキサム酸はシミにどのような効果がありますか?
- トラネキサム酸は、メラノサイトの活性化を抑制する効果を持っています。メラノサイトではシミの原因であるメラニンが産生されます。メラノサイトは活性化することでメラニンを産生しますが、トラネキサム酸の働きはこのメラノサイトを活性化させる物質の阻害です。
これによってメラニンの色素沈着を抑制してシミの発生を防ぎます。またできてしまったシミに対してもトラネキサム酸の抗炎症作用によって、シミを薄くする効果が期待できます。
- トラネキサム酸がシミに効果を発揮するメカニズムを教えてください。
- お肌の一番外側にある表皮には、ケラチノサイトという表皮細胞があります。このケラチノサイトは、紫外線や女性ホルモンなどの刺激誘因物質から影響を受けるとメラノサイト活性化因子を作ります。
このとき作られるメラノサイト活性化因子には、プラスミンやプロスタグランジンといった種類があり、これらの働きは情報伝達です。ケラチノサイトで産生されたメラノサイト活性化因子は、表皮の最下層である基底細胞内のメラノサイト(色素細胞)へ運ばれます。
情報が伝達されたメラノサイトでは、チロシンというアミノ酸をメラニンへ変化させてケラチノサイトへ運びます。メラニンは本来、肌を紫外線などの刺激から守る役割を持っています。しかし蓄積することで肌へと沈着し、シミや肝斑の原因になってしまうのです。
そしてトラネキサム酸は、メラノサイト活性化因子であるプラスミンやプロスタグランジンの阻害作用を持つお薬です。このトラネキサム酸の働きによってメラノサイトはメラニンを作るための情報が阻害されるため、結果としてメラニンの産生は抑制されます。
このようにトラネキサム酸は、皮膚が受けた紫外線などの刺激からシミの原因であるメラニンを作る情報を伝達する物質を阻害してシミの産生を防いでいるのです。
またすでにシミができてしまった部位に対しても、トラネキサム酸の抗炎症作用とメラノサイト活性の抑制作用によって美白効果が期待できます。
- トラネキサム酸はどのくらいの期間で効果を感じられますか?
- 継続的なトラネキサム酸の服用開始後に、効果が出るまでには4週間以上の期間がかかります。そのため服用開始してもすぐに効果がみられるわけではありませんが、継続して服用を続けなくてはいけません。
この効果は、早くても内服開始後4週目、遅い場合には8週目程度に確認されています。また内服を中止するとトラネキサム酸によって得られた美白効果は薄れ、中止後4〜8週程で肌の色に変化が現れたという検証結果もあります。
しかしトラネキサム酸の効果は個人差があり、体質や状況によっても異なります。そのためこれらの期間は、おおよその目安としてとらえておく方がよいでしょう。
- トラネキサム酸を使用すればシミを消せますか?
- トラネキサム酸のシミに対する主な作用はメラニンの産生を予防することですが、できてしまったシミを薄くする効果も期待できます。トラネキサム酸はもともとは、抗炎症剤として使用されていました。この炎症を抑える作用には、シミを薄くする効果が期待できます。
- トラネキサム酸に副作用はありますか?
- トラネキサム酸は副作用が出にくい薬ですが、稀に以下のような副作用が現れることがあります。
- 吐き気
- 食欲不振
- 下痢
- 胸やけ
- 過敏症
- 発疹
これらの副作用症状がみられる割合は全体の0.1〜5%程度といわれています。このような症状がみられた場合には、すぐに内服を中止してください。
トラネキサム酸使用時の注意点
- トラネキサム酸配合の化粧品や外用薬の注意点を教えてください。
- 美白成分として注目を集めるトラネキサム酸配合の化粧品や外用薬は、さまざまな製品として幅広く販売されています。トラネキサム酸は元々、副作用が起こりにくいお薬です。一般的に外用の場合は、内服する場合に比べて副作用のリスクは少なくなります。
そのため化粧品や外用薬の使用であっても副作用症状の吐き気・過敏症・発疹などが起こる可能性はありますが、内服に比べ起こりにくいとされています。
- トラネキサム酸の飲み薬の注意点を教えてください。
- トラネキサム酸は、美白効果のほかに止血効果も持ち合わせています。そのため服用することで血液が固まりやすくなるリスクがあります。
そのため脳梗塞・心筋梗塞・血栓性静脈炎などの持病がある場合には、必ず医師の診察を受けて内服が可能か服用前に確認が必要です。このリスクを考慮して医師は診察後に処方しているため、服用する際には医療機関の受診・医師や薬剤師の診察がおすすめです。
また以前にもトラネキサム酸を使用して、アレルギー症状が出たことがある場合や妊娠中、授乳中に服用したい場合にも医師や薬剤師に相談して使用しましょう。
トラネキサム酸は薬局で市販薬として購入できます。処方薬と市販薬に含まれている成分は同じですが、含有量は異なります。市販薬は処方薬よりも含有量が少なく設定されています。
市販薬は安全面を考慮して含有量が少なくなっているため、使用上の注意にしたがって正しく服用しましょう。もし成分量を増やして高い効果を得たい場合には、医療機関を受診して処方を受ける必要があります。
- 飲み合わせに注意が必要な薬はありますか?
- トラネキサム酸はピルと併用ができないお薬です。また同じ成分の過剰接種を防ぐため、抗炎症薬としてトラネキサム酸を含む風邪薬や止血剤などの処方を受けた場合には、医師や薬剤師に相談しましょう。
編集部まとめ
トラネキサム酸は、2002年に厚生労働省から安全性と有効性の認可を受けた美白成分の1つです。
その効果は、シミの原因であるメラニンを産生される工程の早い段階で阻害することです。効果が出るまでには、飲み始めてから4〜8週間程かかります。
また、飲み合わせに注意しなければいけないお薬はピルで、これらを併用して飲むことはできません。
トラネキサム酸には止血効果があるため、脳梗塞や心筋梗塞などの持病がある場合には注意が必要です。服用前は必ず医療機関で相談しましょう。
参考文献