肌のシミが気になって病院で治療を受ける場合、一般の皮膚科でも治療を受けられるのか、美容皮膚科に行くべきなのか迷うことがあります。
保険治療で受けられるのか、全額自己負担になるのかも気になるところです。保険で治療を受けることができれば、費用は1~3割の負担で済みます。
この記事では、保険適用で受けられる治療の範囲、適用疾患を詳しく解説します。どこで治療を受けたらいいのか、保険適用で治療を受けられるのか知りたい人は、参考にしてください。
シミ取り治療は皮膚科で保険適用で受けられる?
一般の皮膚科では、生まれつきや外傷性のシミであり皮膚疾患と認められた場合のみ保険適用で治療を受けることができます。
保険診療では解決できない皮膚の悩みに対して、より満足のいく治療を目指す場合は自費診療を受けることになります。
シミに対する治療は、レーザー治療・内服・外用療法が一般的です。
疾患によって、シミの治療は保険適用できる場合もあるので、皮膚科または美容皮膚科の医師にシミの種類を診断してもらうことが必要です。
シミ取り治療が皮膚科で保険適用になるケース
シミ取り治療は、すべての人が皮膚科で保険適用で受けられるわけではありません。生まれつきや外傷性のシミに限り、保険適用で治療を受けられます。
美容目的、加齢や紫外線によるシミは保険適用外です。保険適用で治療できるシミか診断してもらうために、一度クリニックで受診しましょう。
シミ取り治療が皮膚科で保険適用になるケースを紹介します。
異所性蒙古斑
生まれつきまたは生まれて間もなくできるものや思春期以降の大人になってからできてくる青いあざのことを青あざといいます。青あざは、色素細胞(メラノサイト)が皮膚の深いところ(真皮)に集まってできるあざです。
生まれつきの青あざで多いのが蒙古斑です。蒙古斑は生後1週から1ヵ月頃までに、お尻や背中の下部に見られます。日本人を含むアジア人のほぼ100%に見られる青あざです。5~6歳でほぼ自然消失するので、特に治療せず経過を見ます。
まれにおしり以外の部位に蒙古斑が見られることがあります。おしり以外の部位にできる青あざが異所性蒙古斑です。異所性蒙古斑は自然に消える可能性は低く、保険適用によるレーザー治療が勧められます。
太田母斑
太田母斑(おおたぼはん)は、顔の片側のおでこ・目のまわり・頬・上くちびるなどの領域に現れる点状のあざの集まりです。ほとんどが顔の片側だけに見られますが、まれに両側に出ることもあります。思春期以降の黄色人種の女性に特に多いといわれていますが、乳児から発生しだんだん濃くなることもあります。
日本では1000人に1~2人の発生率です。一度発生すると自然に消退しません。異所性蒙古斑と同様、保険適用によるレーザー治療を行います。
目の白目部分が青くなることもありますが、眼球へのリスクを伴うためレーザー治療ができません。そのため、白目の青あざの治療は難しいでしょう。
外傷性の色素沈着
外傷により傷口から皮膚の内部に異物が侵入し、異物が取り除かれないまま傷口が閉じることがあります。皮膚内に取り残された異物により起こる色素沈着が外傷性色素沈着です。
転倒し砂やタールなどの色素が傷口に入り込むことや、鉛筆の芯が刺さって皮膚内に残ることなどで起こります。
保険適用によるレーザー治療が可能です。
扁平母斑
皮膚の色を作るメラニンが皮膚の浅いところに増えてできる茶色のあざを扁平母斑といいます。ほくろのように皮膚から盛り上がることはないため、盛り上がりのないあざという意味で扁平母斑と呼ばれています。
色は、カフェオレのような色調です。通常は茶色のあざですが、内部に直径1mm程度の小さな黒褐色の点状色素斑を伴うものもあります。
体のどこにでも見られ、ほとんどは生まれつきですが、思春期になって発生する場合もあります。
先天性、遅発性のどちらも、悪性化することは通常ありません。
保険適用によるレーザー治療を行います。
シミ取り治療が皮膚科で保険適用にならないケース
美容目的や加齢、紫外線によるシミは保険適用外になり、自費での支払いになります。
自費診療の料金は各施設で自由に決めることができるので、施設により料金設定が異なります。複数の施設の治療法・料金・保証制度などを比較して検討しましょう。
シミ取り治療が皮膚科で保険適用にならないケースを紹介します。
炎症性色素沈着
ニキビ・湿疹・皮膚炎・やけど・虫刺されなどで皮膚が障害を受けると、皮膚の細胞には炎症が生じます。そのときに表皮の基底層にある色素細胞も一緒に活性化して、メラニン組織を過剰産生してしまい、炎症性色素沈着が残ってしまいます。
例えば、怪我をして傷跡が炎症を起こし色素沈着をした場合は保険適用でビタミンC配合剤の内服薬が処方されますが、日焼けが原因で色素沈着を起こした場合は保険適用外です。
治療は、ビタミンC配合剤の内服、ハイドロキノン配合外用薬の使用が一般的です。
そばかす
雀卵斑(じゃくらんはん)は、そばかすのことです。紫外線の影響のほか、遺伝により幼少期からできる場合もあります。小さなシミが鼻と左右の頬を中心に広範囲に現れます。
そばかすの治療にはレーザー治療が有効です。
肝斑
肝斑は中年女性に多く見られる色素斑です。頬骨の高い位置や目尻の下に左右対称に現れるのが特徴です。女性ホルモンと紫外線暴露が主な原因と考えられています。
妊娠やピル、閉経後のホルモン補充療法に伴って発生することもあるため、ホルモン剤の中止を検討する場合もあります。
肝斑の治療は、ビタミンC配合剤とトラネキサム酸の内服薬、ハイドロキノン配合外用薬やレーザー治療などです。
老人性色素斑
老人性色素斑は中年以降によく見られるシミで、主に紫外線が原因で発生します。顔以外にも日光の当たりやすい手の甲や腕にできます。はじめは薄い茶色ですが、加齢による新陳代謝の低下でメラニン色素が排出されず濃くなっていくのが特徴です。境界が明瞭で類円形、大小さまざまな褐色斑です。
老人性色素斑の治療は、ビタミンC配合剤とトラネキサム酸の内服薬、ハイドロキノン配合外用薬やレーザー治療などを行います。
シミ取り治療が保険適用の場合の治療内容
シミ取り治療で保険が適用されるのは、一部の内服薬とレーザー治療のみです。
異所性蒙古斑・太田母斑・外傷性色素沈着(外傷性刺青)・扁平母斑は、保険適用でレーザー治療を受けられます。
美容目的や、加齢や紫外線によるシミは保険適用外になります。クリニックでシミの種類を診断してもらって治療を受けるようにしましょう。
内服薬
シミ治療で主に使用される内服薬は、以下の2種ですが、保険適用外での治療となります。
- ビタミンC配合剤
- トラネキサム酸
ビタミンC配合剤は、シミの原因となるメラニン色素の形成を抑制しメラニン色素の還元を促進することで、シミを薄くする働きがあります。
美容目的では保険適用にはなりません。炎症後の色素沈着の場合のみ保険適用になる場合があります。
トラネキサム酸は、皮膚疾患の場合、湿疹・蕁麻疹であれば保険適用です。肝斑の治療薬として有名ですが、保険適用外となります。
トラネキサム酸は、メラニンを生成する色素細胞メラノサイトの活性化を抑制する作用があるため、肝斑に効果的です。保険適用外となるため、自費扱いとなります。
外用薬
シミ治療で主に使用される外用薬はハイドロキノン配合外用薬が一般的ですが、保険適用外での治療です。
皮膚科や美容皮膚科で販売されているドクターズコスメや市販の化粧品にもハイドロキノン含有の商品があり購入可能です。
ハイドロキノンは、メラニンの元となる酵素を抑制し、メラニンの発生を防ぎます。また、すでに生成されたメラニンを還元し、シミを薄くする効果も期待できます。
ハイドロキノン配合外用薬を使用するときは、日焼け止めクリームを使用してください。
ハイドロキノンの使用が向いているシミは、炎症性色素沈着・肝斑・老人性色素斑です。保険適用外となるため、自費扱いとなります。
レーザー治療
レーザー治療に保険適用が認められている疾患は、以下のとおりです。保険適用がある場合でも回数などに制限がある場合があります。
- 異所性蒙古斑
- 太田母斑
- 外傷性色素沈着(外傷性刺青)
- 扁平母斑
加齢性色素沈着は、保険適用外で自費になりますが、レーザー治療は有効です。
- 老人性色素斑……レーザー・光治療(IPL)は、有効
- 肝斑……内服・外用の治療・UVケアを行って効果が得られない場合、併用療法として、レーザー・光治療(IPL)を行う
レーザー治療は、皮膚の深いところまで届き原因となるメラニンを照射するため、照射直後はシミが濃くなったように感じます。かさぶたのようになりますが、1週間程度で自然に取れます。レーザー治療後は炎症性色素沈着を
起こすことがありますが、濃くなって消えない場合は治療した医師に相談してください。
基本的な治療はQスイッチレーザー照射を行います。Qスイッチレーザーは、光パルス持続時間がナノ秒であることを指します。シミを照射するには十分な加熱が必要です。このとき周囲の組織ダメージが少ないパルス持続時間が選択されます。
光治療(IPL治療)は、皮膚の表面層に働きかける治療です。レーザーに比べて、術後にかさぶたができにくく肌トラブルが少ないという利点があります。複数回の照射が必要となり治療期間が長引く傾向にあります。
シミ取り治療を美容皮膚科で保険適用で受けられるか
シミは、美容皮膚科においても、生まれつき・外傷性のシミであり皮膚疾患と認められた場合は保険適用で治療を受けることができます。
美容目的、加齢や紫外線によるシミ治療は保険適用外です。
美容皮膚科では、初回にカウンセリングを行うところがほとんどです。セルフケアを含めた生活習慣もヒアリングし、医師がシミの種類を分類したうえで、治療の内容・回数・予算なども含め適切な治療プランを組みます。
美容皮膚科では、皮膚をよりよい状態に導くという目的で、皮膚の悩みに対して適切な治療方針を専門の医師が提案します。
シミ取り治療の費用相場
病気や外傷を治療する場合には、健康保険が適応されます。健康保険では疾病や治療方法などにより細かく分類・点数化されていて、点数に基づいて治療費の請求がされるため、どこのクリニックにかかっても治療に関する費用は変わりません。(治療以外の管理料などに差はあります。)
それに対し、自費診療はクリニックが治療費を決定できるため、クリニックにより治療費が異なります。費用をよく確認してから、治療を開始するようにしてください。
皮膚科の場合
皮膚科において、保険診療でレーザー治療を受ける場合の治療費(3割負担)は以下のとおりです。別途、診察料が加算されます。
- 4cm²未満……約6,000円
- 4cm²以上16cm²未満……約7,200円
- 16cm²以上64cm²未満……約8,700円
- 64cm²以上……約12,000円
皮膚科においても、美容目的の場合は自由診療となります。自由診療の費用はクリニックにより異なるため、次の美容皮膚科の場合を参考にしてください。
美容皮膚科の場合
美容目的の場合は、自費診療となります。クリニックにより費用が異なるためカウンセリング時に治療方法・費用・回数など、しっかり相談をしましょう。
内服薬の費用相場は次のとおりです。
- ビタミンC配合剤……約1,000~3,000円(税込)/30日
- トラネキサム酸……約2,000~4,000円(税込)/30日
外用薬の費用相場は次のようになっています。
- ハイドロキノン……約1,000~3,000円(税込)/5g
最後にレーザー治療の費用相場を紹介します。
- 治療部位1mm(径)……約3,000円(税込)
- スポット治療(目立つシミの治療)……約3,000円~30,000円(税込)(大きさにより異なります)
- セット治療(複数のシミがある場合の定額プラン)……約30,000円~100,000円(税込)
まとめ
シミ取り治療は、すべての人が皮膚科で保険適用で受けられるわけではありません。生まれつきや外傷性のシミの場合、保険適用で治療を受けられます。
美容目的、加齢や紫外線によるシミの治療は保険適用外です。クリニックを受診し保険適用で治療できるシミか診断してもらってください。
加齢や紫外線によるものだと思っていたシミが、皮膚がんの場合もあります。自己判断せず、医師に相談するようにしましょう。
自由診療で治療を受ける場合はクリニックにより費用が異なるため、カウンセリング時に治療方法・費用・回数など、しっかり相談をすることが大切です。
参考文献