シミと聞いて、どのような症状をイメージするでしょうか。加齢に伴い現れる、できてしまったら仕方ないとあきらめるしかない……。そのように感じている人も少なくないかもしれませんね。
シミは多くの人が抱える肌の悩みの一つですが、その種類や原因はさまざまです。本記事では、シミの種類から原因、そして効果的な治療方法までを詳しく解説します。日常生活での予防方法も含め、美しい肌を保つための知識を深めましょう。
シミの種類
多くの人が気になるシミですが、その種類はとても多岐にわたります。ここでは、各種シミの特徴や発生原因について詳しく解説していきます。
老人性色素斑
老人性色素斑は、主に紫外線の影響を受けて生じるシミの一種です。このタイプのシミは、顔や手の甲、腕など、日光が直接あたりやすい部位によく現れます。最初は色が薄くほとんど目立ちにくいものの、時間が経過するにつれて色が濃くなり、境界もはっきりしてきます。
紫外線が主な原因であるため、日焼け止めの使用や光を遮る帽子の着用といった紫外線対策を行うことで、シミの発生をある程度防ぐことが可能です。
また、名称に老人性と含まれていますが、実際には20代後半から現れることもありますので、若いうちから、しっかりと紫外線対策を行いましょう。
主な治療方法には、ピコセカンドレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザー、トレチノインゲルの外用などがあげられます。
炎症後色素沈着
ニキビや傷、虫刺され、かぶれなどの後に生じる炎症が引き金となって形成されるシミを、炎症後色素沈着と呼びます。このシミは、炎症が発生した部位に色素が沈着することで現れます。
炎症後色素沈着は、時間が経つにつれて自然に薄くなり消えていくことが少なくないのですが、完全に消えるまでには数年かかることもあります。特に、日焼けによる追加的な色素沈着が生じると、シミがより目立ち消えにくくなることがあります。主な治療方法には、メソアクティス、トレチノイン ハイドロキノン療法などがあげられます。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、肌が浅黒い人に特に出やすいシミで、頬骨を中心に広がり、境界が不明瞭です。妊娠時に濃くなることが少なくないため、女性ホルモンの影響も関与しているとされます。
しかし、洗顔時に強くこすることで出現するとも考えられているため、過剰なこすり洗いは避けましょう。
トラネキサム酸やビタミンCの内服により、シミを薄くすることが可能です。また、治療が困難な場合には、ピコセカンドレーザーによるピコトーニングやトレチノインゲルの併用が効果的であるとされています。主な治療方法には、トラネキサム酸内服、ピコセカンドレーザー、トレチノインゲルの外用などがあげられます。
雀卵斑(そばかす)
雀卵斑、一般的にそばかすとも呼ばれるこのシミは、小学生の頃から現れ始め、遺伝的要素が強いとされています。思春期以降に濃くなる傾向がありますが、中高年になると徐々に目立たなくなることが少なくないです。紫外線の影響や妊娠によっても濃くなる場合があります。
1~5mmの褐色斑が、両頬から鼻の付け根にかけて多く見られるのが特徴で、顔全体に広がることもあります。主な治療方法には、ピコセカンドレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどがあげられます。
後天性真皮メラノサイトーシス(後天性両側性太田母斑様色素斑)
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)は、原因が完全には明らかにされていません。頬骨から下まぶたにかけて左右対称に生じ、色調は灰色や褐色でややくすんで見えることが特徴です。
肝斑と併発することも少なくないとされています。治療には時間と回数が必要ですが、レーザー治療によりかなりきれいに治すことが可能です。
主な治療方法には、ピコセカンドレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどがあげられます。
シミの原因
シミができる原因は多岐にわたります。それぞれの原因には身体的、または環境的要素が関わっています。これらの原因を正しく理解することは、効果的な予防と治療のための第一歩となります。
ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンバランスの乱れは、特に肝斑に直接的な影響を与えることが知られています。
女性ホルモンには、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の2種類があります。プロゲステロンはメラノサイトでのメラニン生成を促進する働きがあり、特に排卵後の2週間や妊娠期、または経口避妊薬を使用しているときに多く生成されます。
これらの期間はメラニンが形成されやすいため、できるだけ紫外線に当たらないよう気をつけるようにしましょう。
肌への過剰な刺激
シミを防ぐためには、正常なターンオーバーがとても重要です。しかし、過剰な洗顔やスキンケアがターンオーバーのバランスを崩してしまうことがあります。
例えば、強くこすって顔を洗う行為や力強いマッサージは、肌を傷つけてしまいます。これが、ターンオーバーの乱れやメラニン色素の過剰生成を招くことがあります。
ターンオーバーのサイクルの乱れ
上述したとおり、シミの原因にはターンオーバーの乱れが大きく関わっています。
さまざまな要因により、メラニンの生成が過剰になり、ターンオーバーのサイクルが乱れると、新陳代謝が滞ります。この結果、通常は剥がれ落ちるはずのメラニンが肌に留まり、色素沈着を引き起こしシミとなってしまいます。
主な原因としては紫外線が挙げられます。長期にわたる紫外線の影響で肌がダメージを受けると、皮膚細胞の再生能力が低下し、メラニンの排泄が遅れがちになります。
また、タバコやストレスは活性酸素を増やし、老化を促進する一因に。これがメラノサイトを刺激してメラニンの過剰生成を招くことがあります。不規則な生活や過労による血行不良も、メラニンの排出を遅らせる要因となり得ます。
遺伝的要因
シミの発生には、遺伝的な要素も大きく影響します。特に、そばかすや後天性真皮メラノサイトーシスのようなシミは、親から子へと遺伝する可能性があります。
ただし、成長に伴って薄れたり、目立たなくなったりする場合もあります。
シミの治療方法
シミを取り除くための治療法はのうち、ここでは、レーザー治療、光治療、内服薬や外用薬による治療の3つについて、詳しく解説します。
レーザー治療
レーザーを強い出力で照射する、一般的なシミ治療方法です。この方法では、1~2回の治療でシミを目立たなくできることが多く、とても高い効果を得られます。
治療直後はテープや絆創膏で肌を保護します。その後、約1~2週間でかさぶたが取れて新しいピンク色の皮膚が現れます。
この回復期間をダウンタイムと呼び、特に皮膚が敏感になる期間のため、丁寧なケアが必要となります。完全に治るまでには約1~2ヵ月かかります。一般的なレーザーは治療の効果が高く回数も少なくて済む反面、必ずダウンタイムがあるのがデメリットです。
さらにPIH(炎症後色素沈着)の症状が現れるリスクもあります。
・レーザートーニング
レーザーを低めの出力で照射し、メラニン色素だけを破壊する治療法です。
治療効果はマイルドで治療回数が増える傾向にありますが、その分ダウンタイムやPIHのリスクが少ないのがメリット。治療後すぐにメイクが可能なので、働きながらの治療にも適しています。
・シミを蒸散させ除去
水分に吸収されやすい波長のレーザーを使用し、シミを含む組織全体を蒸散させます。特に盛り上がったシミやほくろ、イボの治療に有効です。
治療後はかさぶたが形成され、治療部位には赤みが生じることも。完全に赤みが引くまでには数ヵ月かかることもあり、適切なアフターケアが重要です。
光治療
光治療は、複数の特殊な波長の光を肌に照射し、メラニンやヘモグロビンなどを破壊することで肌の悩みを改善する方法です。この治療はシミやそばかす、さらにはニキビや毛穴の問題、肌質の改善にも効果的です。
シミにピンポイントで照射するレーザー治療と比較すると、光治療は顔全体と広く照射することで、より広範囲の肌問題に対処できます。
強力なレーザー治療を行うと、治療後にかさぶたができることがあり、場合によっては保護シールでカバーする必要があります。しかし、光治療ではそのような強い反応は少なく、治療後すぐに洗顔やメイクが可能です。
内服薬や外用薬
シミの治療にはレーザー治療以外にも、外用薬や内服薬を使用する方法があります。
特に、頬に左右対称に見られるモヤッとしたシミやくすみは、肝斑である可能性が高く、これらは紫外線の影響だけでなくホルモンバランスも関与していると考えられています。肝斑の治療には、外用薬や内服薬の使用が基本的なアプローチとなります。
ハイドロキノンは、しみの原因であるメラニンの合成を阻止する効果がある美白成分です。ハイドロキノンは皮膚の漂白剤とも呼ばれ、特にシミやニキビ跡、レーザー治療後の色素沈着に対して高い効果があります。トレチノインは、ビタミンAの誘導体であり、皮膚のターンオーバーを促進し、シミやしわの改善に寄与します。ニキビ治療にも有効ですが、使用中には赤みや皮剥けといった副作用が発生することがあります。
これらの副作用はA反応と呼ばれ、使用中は医師の指導のもとで慎重に管理する必要があります。また、トラネキサム酸、ビタミンC(シナール)、ビタミンE(ユベラ)、Lシステイン(ハイチオール)、グルタチオン(タチオン)などの美容目的の内服薬も使用されます。
これらの内服薬は、レーザー治療や外用薬と併用することで、シミの改善にさらに効果的です。
シミの対処法
シミの発生を抑えるためには、日常生活のなかでの予防がとても重要です。ここでは、シミを予防し対処するための基本的な方法をご紹介します。
紫外線から肌を守る
シミを予防する基本は、紫外線による日焼けを避けることです。一年中、UV加工された帽子や衣服を着用し、日傘をさし、日焼け止めクリームをこまめに塗り直すなどして、紫外線カット対策を行ってください。
シミは紫外線の積み重ねによって発生するため、日常から紫外線を浴びないよう注意することが重要です。
正しい生活習慣でお肌を整える
肌の健康を保つためには、正常なターンオーバー(肌の新陳代謝)が不可欠です。寝不足やストレス、不規則な食生活、運動不足、便秘、冷え性などが肌のターンオーバーを乱し、シミの原因となる黒色メラニンの発生につながります。
生活習慣を見直し、L-システインのような栄養素を摂取することで、肌の代謝機能を正常化することができます。
食生活に気をつける
シミの予防には内側からのケアも重要です。紫外線によって体内で生成される活性酸素は、DNA損傷を引き起こし、シミや老化を促進します。抗酸化物質を多く含む食品を積極的に摂取しましょう。
シミ予防に効果的な食品には、以下のようなものがあります。
ビタミンC:ピーマン、パプリカ、レモン、ブロッコリー、キャベツ、ジャガイモ、いちごなど
ビタミンA:にんじん、ほうれん草、かぼちゃ、チンゲン菜、ニラ、しそなどの緑黄色野菜
ビタミンE:豆類、かぼちゃ、アボガド、ウナギ、煎茶など
リコピン:トマト、スイカ、グレープフルーツ、柿、さくらんぼなど
ポリフェノール:赤ワイン、カカオ、ココア、チョコレート、ブルーベリー、大豆など
Lシステイン:牛肉、魚介類、牛乳、大豆、豆類、ほうれん草など
エラグ酸:いちご、ラズベリー、ブルーベリー、ざくろ、クルミなど
フラボノイド:豆類、玉ねぎ、しそ、緑茶など
編集部まとめ
この記事では、シミの種類別の特徴と原因、そしてそれぞれの効果的な治療法を詳しくご紹介しました。シミとひと口にいっても、さまざまなタイプがあることをおわかりいただけたかと思います。
ご自身のシミがどのタイプに当てはまるのか、自己判断するのは難しいかもしれません。不安に思った際はクリニックへ足を運び、ぜひ専門家の診断を受けましょう。治療が必要であれば、相談に乗ってもらうことで不安がクリアになるはずです。
もちろん、これ以上シミを増やさないための予防も大切です。紫外線対策や適切な生活習慣、栄養豊富な食事を心がけ、健康的な肌をキープしましょう。
参考文献